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女ざかりの恋の音色は
第12章 【番外編】くもり空と秋晴れの空と
「やーん、相変わらず素敵~。それ、新作のバッグですよね!?いいなー。旦那さんからのプレゼントですかぁ?」
「あー、うん。そうなの」

藍も自然な笑顔で返す。透き通るような美しい肌に大きい目が印象的で、近くで見ると圧倒される。何センチかわからないが芙実が履いたら一人では立っていられそうにないくらいの高さのピンヒールを履いている。何もかもかっこよく、まさに大人の女性だった。

女子たちは一通り藍を褒めると、今度お家に遊びに行かせてくださーいとお決まりの社交辞令を言って過ぎ去っていく。

芙実は理志にこっそり視線を向けると、理志もこっちを見ていた。
ギクっとしてすぐに視線を反らした。

「待って、樫野さん、髪の毛に何かついてる」

理志に小さな声で呼び止められて咄嗟に芙実は立ち止まった。
女子たちは気付かずに先にエレベーターの方へ行ってしまった。

「え?あ・・・・・・・」

芙実は前髪に手で触れて、何がついているのだろうと焦って探った。

「こっちこっち」

理志が後ろで束ねた方の髪を掴んで毛先についているものを取ってくれた。

「これは・・・・・米だな」
「あ・・・・・ありがとうございます」

芙実は米を受け取ろうと手のひらを差し出した。
理志が手のひらに米を置くタイミングで手のひらを指先でス・・・・・と撫でた。

「・・・・・・・!」

芙実は咄嗟に手を引っ込めた。

「忙しいのにお弁当ちゃんと作ってるんだね」
「たいしたものじゃないので・・・・・」
「今度、俺の分も作ってよ」
「いやー・・・・ははは・・・・・・」

芙実は理志の目が見れなくて、曖昧に笑った。


「ちょっと、何言ってんのよ。困ってるじゃない」

藍が芙実と理志の会話を聞いて間に入ってきた。

「新人さん?」

芙実を見て微笑む。ゆかりの言っていたことがなんとなくわかる。笑顔が自然を装い過ぎて自然でない感じがするのだ。

「前は派遣で来てて、今はアルバイトだよ。でも、社員より仕事できて、すごく頼りになる」

理志が紹介すると、藍はへー~と驚いた顔をした。

「理志がそんなこというの、珍しい」

藍が’理志’と名前を口にした途端、芙実の頭に考えまいとしていた光景が浮かんでしまった。

(理志さんは、この人とキスしたり・・・・・もちろんその先も・・・・・・・)

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