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女ざかりの恋の音色は
第12章 【番外編】くもり空と秋晴れの空と
芙実は一瞬立ちくらみのように視界が歪んだ気がしてぎゅっと目を瞑った。
「す、すみません。失礼します」
芙実は咄嗟に頭を下げてその場を走り去った。
いそいでトイレに駆け込む。
吐きそうになってこらえる。
深呼吸をしてどうにか心を落ち着かせた。
激しく狂いそうなほどの嫉妬の嵐だった。
今までの嫉妬の対象は、理志を一方的に想っている女性たちだったが、今回は違う。
理志が想っていた相手なのだ。
もちろん、理志はこれまで何人もの女性と付き合ってきただろうから、そんなことをいちいち気にして理志と一緒にいるわけではない。
しかし、今日のように本人を前にしてしまったら冷静でいられなかった。
芙実は吐き気が落ち着くと急いでトイレを出た。早くオフィスに戻らないといけない。
エレベーターホールへ向かうと、理志が一人ホールに立っていた。
「蒼井さん・・・・・」
「大丈夫?」
芙実の様子がおかしいと思って、待っていてくれたのだ。
芙実は少し泣きそうになって大丈夫ですと返事した。
ちょうどエレベーターが到着し、扉が開く。
誰もいないエレベーターに二人で乗り込む。
理志は行き先階のボタンを押して、扉が閉まるとすぐに芙実を抱き寄せた。
「どうして目、合わせてくれないの?」
理志が芙実の顎を掴んで上を向かせる。
「なんでもないです・・・・・」
「なんでもないわけないだろ。泣きそうな顔して」
理志が芙実の唇に深くキスする。
「んっ・・・・・!」
理志は抵抗する芙実の舌をむりやり引き出すように絡ませ唇を強く吸った。
「誰かに何か聞いた?」
「・・・・・・・・」
「俺が今好きなのは芙実だよ。後にも先にも、芙実以上の人はいない」
いつもは素直に喜べる言葉が、すんなり入ってこない。
どの角度から見ても、藍よりも自分が勝っていると思えるところがないからだ。
「はい・・・・・・」
それでも、理志に心配をかけないように芙実は返事した。
理志は芙実の頬を撫でて、まだ何か言いたそうにしていたが、エレベーターが到着すると先に行くねと言って行ってしまった。
(あの人とも・・・・・こうやって隠れてキスしたりしてたんだろうか・・・・・・)
女性としてのあまりの差に、芙実はすっかり自信を喪失していた。
足元から崩れて底のない穴に落ちていってしまいそうな不安が拭えなかった。
「す、すみません。失礼します」
芙実は咄嗟に頭を下げてその場を走り去った。
いそいでトイレに駆け込む。
吐きそうになってこらえる。
深呼吸をしてどうにか心を落ち着かせた。
激しく狂いそうなほどの嫉妬の嵐だった。
今までの嫉妬の対象は、理志を一方的に想っている女性たちだったが、今回は違う。
理志が想っていた相手なのだ。
もちろん、理志はこれまで何人もの女性と付き合ってきただろうから、そんなことをいちいち気にして理志と一緒にいるわけではない。
しかし、今日のように本人を前にしてしまったら冷静でいられなかった。
芙実は吐き気が落ち着くと急いでトイレを出た。早くオフィスに戻らないといけない。
エレベーターホールへ向かうと、理志が一人ホールに立っていた。
「蒼井さん・・・・・」
「大丈夫?」
芙実の様子がおかしいと思って、待っていてくれたのだ。
芙実は少し泣きそうになって大丈夫ですと返事した。
ちょうどエレベーターが到着し、扉が開く。
誰もいないエレベーターに二人で乗り込む。
理志は行き先階のボタンを押して、扉が閉まるとすぐに芙実を抱き寄せた。
「どうして目、合わせてくれないの?」
理志が芙実の顎を掴んで上を向かせる。
「なんでもないです・・・・・」
「なんでもないわけないだろ。泣きそうな顔して」
理志が芙実の唇に深くキスする。
「んっ・・・・・!」
理志は抵抗する芙実の舌をむりやり引き出すように絡ませ唇を強く吸った。
「誰かに何か聞いた?」
「・・・・・・・・」
「俺が今好きなのは芙実だよ。後にも先にも、芙実以上の人はいない」
いつもは素直に喜べる言葉が、すんなり入ってこない。
どの角度から見ても、藍よりも自分が勝っていると思えるところがないからだ。
「はい・・・・・・」
それでも、理志に心配をかけないように芙実は返事した。
理志は芙実の頬を撫でて、まだ何か言いたそうにしていたが、エレベーターが到着すると先に行くねと言って行ってしまった。
(あの人とも・・・・・こうやって隠れてキスしたりしてたんだろうか・・・・・・)
女性としてのあまりの差に、芙実はすっかり自信を喪失していた。
足元から崩れて底のない穴に落ちていってしまいそうな不安が拭えなかった。