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女ざかりの恋の音色は
第12章 【番外編】くもり空と秋晴れの空と
様々な店がキャンバスに並び、若者たちが大きな声で呼び込みをしている。
もう暗くなっているが、来場者は多く、建物の中にも人が沢山いた。

良い匂いがそこかしこから流れてきて、芙実は帰りに何か買ってかえろうと、まずは軽音サークルを探した。

三階の教室で今まさに軽音サークルに所属しているバンドが順次演奏を披露しているところだった。

芙実はあいているパイプ椅子に座って演奏を聴いた。
みんな思っていたよりもクォリティが高く、芙実の好みの曲を演奏するバンドもいくつかあった。

理志もきっとこうして学園祭でベースを弾いていたのだ。

(見たかったなぁ・・・・・・・)

芙実は大学生の理志を妄想した。
当たり前だが、過去に戻ることはできない。それでも、好きな人がどんな生活を送ってきたのか見てみたいなと思うのだ。

40分ほど終了し、芙実は外へ出た。
体育館で最近若い子に人気があるバンドのライブがあるようだが、おそらくこちらは有料でチケットが必要だろう。一応、当日券があるか確認してみようと思った。

沢山の若い女の子が出入り口に並んでいるのが見え、芙実はうろうろと受付をのぞいてみたが、やはり当日券はなさそうだった。

バンドの機材を搬入するための車が見え、スタッフらしき人がいたので聞いてみることにした。

「すみません、当日券てないですよね?」
「あーそうなんです。全部完売してて・・・・・・」

スタッフの男が振り向いた瞬間、二人とも顔を見合わせて固まった。

「・・・・芙実!」
「・・・・おとくん・・・・・!」

黒いスタッフTシャツとよれよれのジーンズを身に着け、凛々しい濃い眉とつぶらな瞳が印象的な男がそこにいた。
芙実の唯一の元彼の乙部真治だった。

「えー!?」
「うおーびっくりしたぁー」

芙実もまさかこんなところで真治と会うと思ってなかったので、まさに青天の霹靂で驚きのあまり言葉が出てこなかった。

(なんだなんだ、今日は元カレ元カノ祭り!?)

「え?え?おとくん、なんでスタッフTシャツ・・・・・」

真治とは別れてからも、バンドの情報のやりとりをしたり、たまに一緒にライブにも行っていた。友人としてつきあっていたが、社会人になって徐々に連絡が途絶えて、ここ数年はまったく連絡を取り合ってなかった。

保険会社に勤めていて、結婚するという電話が最後だったと記憶している。
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