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女ざかりの恋の音色は
第12章 【番外編】くもり空と秋晴れの空と
翌朝、トイレに行きたくなって目が覚めた。
理志はまだ眠っている。芙実は起さないようにそ~っと寝袋から抜ける。

(さ、寒い~~)

寝袋の上からかけていた毛布がずれていたので、理志の上にそっとかけ直した。
上着を着て外へ出ると、うっすらと空が明るくなり始めていた。ちらほら人が歩いているのが見えるが、まだ多くの人が眠っているようだった。
寒さに身を縮めながら歩いていると、前から友里が歩いてくるのが見えた。
友里も芙実に気がついて微笑んで手を振っている。

「芙実ちゃん、おはよ~」
「おはようございます」
「トイレ?」
「はい。友里さんは?」
「私も今行ってきたんだ。あ、焚き火のところでココア振舞ってる人がいるから、トイレの後、一緒にいかない?」
「ココア・・・・・!行きます!」

友里はもう一度トイレまでの道を芙実と一緒に歩き、キャンプファイヤーをする広場へと二人で向かった。

一人の中年のおばさんがココアを鍋いっぱいに用意してみんなに振舞っていた。
毎年早朝に起きている人に振舞っているらしく、友里は一人で毎年飲んでいると言った。
二人ともココアを手にして焚き火の前に立って暖を取る。
濃い橙色の火を眺めながら二人でココアを啜った。

「昨日さ・・・・・・」

芙実はドキリとして友里を見た。
数秒見つめあって、お互い照れ笑いをする。

「聞こえた?」

友里が恥ずかしそうに尋ねた。
芙実は赤面して頷いた。

「は、はい。いえ、あの、多分私の方が先ですよね・・・・・。ほんとにごめんなさい!雨止んでるの気付かなくて・・・・・・!」

芙実は頭を下げて謝罪した。

「謝らないでよ~。違うんだよ。芙実ちゃんのおかげなんだよ」
「・・・・・・え?」

友里はやっぱり少し恥ずかしそうに、でもとても幸せそうな笑みを浮かべて炎を見た。

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