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女ざかりの恋の音色は
第13章 【番外編  完結】眩い光りの中で
お腹も出ておらず、歳の割にはスタイルが良い芙実の父は、白いシャツに茶色のセーター、皺一つないピシッとしたベージュのズボン姿で現れた。

メガネの向こう側の目は鋭く理志を品定めしている。
理志が立ちあがって挨拶をする。

「はじめまして。芙実さんとお付き合いさせていただいてます、蒼井理志と申します」

理志が頭を深々と下げた。
芙実の父は黒縁のメガネをス・・・・と指で整えてから言った。

「・・・・・はじめまして。芙実の父の樫野誠です」
「芙実の母の洋子です」

芙実だけどうしたらいいのかわからずきょろきょろと三人をみまわした。

「あの、あのー・・・・・お茶!お茶持ってきます!」

芙実はその場にいられなくて逃げるようにしてキッチンへ向かった。

(や、やばい・・・・・!あの雰囲気・・・・・・無理!!)

芙実は母が用意していた来客用のカップに紅茶をいれながらあたふたしていた。
母が様子を見にキッチンへやってきた。

「何してるの?大丈夫?」
「大丈夫じゃない!どうしよう!」

落ち着かない娘を見て母は苦笑した。

「あなただけよ、そんなに落ち着いてないの。大丈夫。お父さんの顔見たらわかる」
「ほんと・・・・・・?」
「ほんとよ。ほら、行きましょ」

母がトレーを持って応接間に向かった。

「・・・・・では、君の職場もやはり激務なのかな。休日出勤とか残業とか」
「忙しい時もありますが、年中というわけではありません。今は少し落ち着いて残業も減って土日も休んでます」

父は理志の仕事について質問しているところだった。
理志は特に言い淀むこともなく、スラスラと答えている。
良く見ると、父の手にはノートパソコンがあって、理志の答えを入力していた。

「!?何それ!?ちょっと!お父さん!面接じゃないんだからやめてよ・・・・・!」
「相手のことをよく知りたいからこうして前もって聞きたいことをまとめておいたんだ。何が悪い」

父は悪びれた様子はなく、真剣な表情で芙実を見た。
いつも以上に真面目で硬い眼差しだった。

「見せて!」

芙実はむりやりパソコンを奪うと、さっと質問に目を通した。

(給与、勤務形態、生い立ち、両親との仲、上司や同僚との関係、過去の女性関係ぇ・・・・・・!?)

芙実は顔をひきつらせて父に訴えかけた。
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