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女ざかりの恋の音色は
第13章 【番外編  完結】眩い光りの中で
「お父さん、一緒に演奏できて嬉しかったのね。こんなに飲むなんて、自分の結婚式以来じゃないかしら。理志さん、相手してくれてありがとう」
「いえ、楽しかったです。お父さん、さすが詳しいですね。楽器のこともすごい知識あって。勉強になります」
「芙実が家を出てから、音楽だけが生きがいだったからねえ」

母が苦笑いして理志の空いたグラスにビールを注いだ。

「お母さんがそうやって理解して支えてくれてるからだと思います。旦那さんの趣味にそこまで協力してくれる奥さんて、なかなかいないですよ」

理志の濁りのない世辞に、母が微笑む。

「今度、あの人が起きてる時にもう一度同じこと言ってくれる?」

理志が、はは!と笑った。
母と理志の間の和やかな空気に芙実は幸せを感じていた。
自分の大切な家族と、愛する人が繋がっていく様は、なんだかくすぐったい気もするが、やっぱり嬉しいものだ。

食事が終わり、母が父を起こそうと声をかけるが、父は全く起きる様子がなかった。

「ごめんなさいね。今日はもう無理みたい」

母が理志に向かって頭を下げる。

「いえ、また来ます。お父さんに、僕の連絡先教えておいてもらえますか?」
「私が教えておきます」

芙実はそう言うと、立ちあがって理志に帰ろうと促した。
玄関まで母が二人を見送る。

「ごちそうさまでした。お母さんの料理、どれもすごく美味しかったです」
「お粗末さまでした。また来てくださいね」
「はい。お父さんにもよろしくお伝えください」

理志が丁寧に頭を下げる。
芙実は母に駅まで送ってくると言って家を出た。

「・・・・・・・・終わった・・・・・・・」

芙実は呻るように呟いた。車に乗った瞬間、疲れがドッと押し寄せた。
芙実は理志の方を向いて頭を下げた。

「お疲れさまでした。ありがとうございました」
「俺、全然疲れてないよ。楽しかった。芙実こそお疲れさま」

理志は疲れた顔を見せずに微笑んでいる。しかし疲れていないはずがない。はやく帰って休んでもらおうと、芙実は車を発進させた。
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