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女ざかりの恋の音色は
第13章 【番外編  完結】眩い光りの中で
朋華の声が聞こえて、理志がドアを開けようとするのを慌てて制止した。
芙実は唇を指さし、芙実のグロスがついていることをジェスチャーで伝える。
理志は、ああーと軽く頷くと、慌てる様子もなく手の甲でそれを拭った。
ドアを開けると朋華がすぐに部屋に入ってきた。

「ねえねえ、芙実ちゃん、ちょっとこっち来て」
「なんだよ」
「あんたに用は無いわよ。下でお母さんの手伝いしてきて。芙実ちゃん、ちょっとだけいい?」
「はい・・・・・・・!」

理志の不安げな様子を無視して、芙実は朋華のあとについていった。

「ここ、私の部屋だったんだけど・・・・・・今は物置小屋ねー」

そう言うと、クローゼットから次々と服を出してカーテンレールに掛け始めた。

「これ、子ども産む前まで着てたやつなんだけど、もう着れなくなっちゃったから、芙実ちゃん着てくれないかなーと思って」
「えっ・・・・・・・!」
「これはシャネルなんだけど、一回しか着てないの。もったいないでしょ?あ、このトレンチ、パリで買ったやつ。十万以上したかな?全然着てないから着てくれると嬉しい。あとー・・・・・これこれ!祖母からもらったエルメスのスカーフ。たくさんあるのよー。祖母が亡くなる時、私と理志の将来のお嫁さんと分けなさいって言われててね。やっと渡せるわ。なんか遺言みたいでずっと心の中にあって。どれがいい?好きなもの持っていって」
「エルメスのスカーフ・・・・・・・」

芙実はおそるおそる手を伸ばしてみたが、怖気づいて手を引っ込めた。

「お、お姉さん、ごめんなさい・・・・・・!エルメスのスカーフなんて、私には恐れ多くて・・・・・・・」

朋華が『へ?』という顔をした後、あははと笑った。

「恐れ多いって、大げさだなぁ。ただのスカーフだよ?」
「いいえ・・・・・・!スカーフなんて、上級者すぎて、私にはとても使いこなせそうにありませんので・・・・・・・!お祖母さまをがっかりさせてしまいます・・・・・・」

本気で怖がっている芙実を見て、朋華はクスっと笑った。
赤い色のスカーフを手にとって、慣れた手つきでネクタイのように細長く折り、芙実の首に巻いた。

「ほら、このワンピースにとっても似合う!」
「え・・・・・・・・・」
「八重子さんも、理志のお嫁さんに使ってもらえて喜んでると思う」


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