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女ざかりの恋の音色は
第1章 秘密の顔
最初は無職の期間中の時間がある時に暇つぶしで始めたのだが、自分でシチュエーションを妄想しながら一人エッチするというのがウケて、次第にアクセス数が伸び、おすすめのグッズをレビューすると売れるようになってきた。

派遣社員として働き始めてからも続けている。ありがたい副収入であり、貯金もしたいがライブにも行きたいという願望をほどよく叶えてくれる大事なブログだった。

このサイトのおかげで、もともと研究熱心だった芙実は、マスターベーションにすっかりハマり、クリトリスはもちろん中でもお尻の方でも気持ちよくなれる体になっていた。

現実では、男の人と一度もセックスしたことがない。女子高、女子大卒だったし、芙実の親が異性関係に厳しかったこともあって、門限も大学卒業まであったのが大きい。大学生の時に入っていたサークルの他大学の男と一度付き合ったことがあるが、キスだけで終わった。
社会人になって東京で一人暮らしを始めたら今度は激務で彼氏を作る余裕もなく、ここまできてしまった。

『男性経験ないのに、オナニー三昧』

そういうキャラクターもウケている要因だ。
現実社会では、芙実はそれを隠しながら生きていた。




「樫野さんのおかげで、生産管理のやつ、納期間に合った」

会議終わりの蒼井理志(あおいさとし)が、芙実の席の背後を通るついでに声をかけてきた。

理志はこの会社の正社員だ。若い人が多いのもあって、男性も女性もみんなおしゃれだが、この人が一番おしゃれだなと芙実は思っている。

凛とした顔をベースに、肩にわずかにかかる長めの髪は無造作にうねり、背が高く身体にフィットしたスーツも、ネクタイやらカフスやら時計やら、いちいちセンスが良い。芙実と同じような眼鏡をかけているのに、理志がかけるとハイレベルのおしゃれ眼鏡になる。横顔なんかは、男の色気が満載だといつも思う。

(なんだろう?髪型?その・・・・・・毛先を散らしてるけどわざとらしくないナチュラルな髪型?いや・・・・・顔・・・・・・かな。やっぱり。うーん、顔には内面が表れるっていうし、やっぱり内面がおしゃれなのかな・・・・・)

芙実は理志を見るといつも’おしゃれとは何か’と考えてしまう。

その時点で自分は向こう側の人間ではないし、そうなりたいわけでもないのだが。

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