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女ざかりの恋の音色は
第1章 秘密の顔
芙実は神奈川の出身だが、田舎だったこともあり、東京のことはあまり知らない。

きっと理志は、六本木とか西麻布のクラブとかバーとかで、夜な夜な仲間とおしゃれなお酒を飲み、おしゃれな女子を連れて、おしゃれな部屋でイチャイチャしてるんだろうな、とまで考えが及ぶ。

自分とは本当に真逆の人物だ。

「そうですか。良かったです」
「早いからって雑じゃないし・・・・・・。すごいよね」
「前の職場で鍛えられたからですかね」
「そう・・・・・・。あのさ、ちょっといい?こっち来てくれる?」
「?」

理志が自分について来るよう促した。一人の新入社員の女性の席に着くと彼女のPC画面を見てと言った。

「ちょっとこの子のコーディング見てくれる?」

芙実は失礼します、と女性に軽く頭を下げてから画面に目を向けた。

(うわぁ・・・・・・これは・・・・・・)

ぐちゃぐちゃなコーディングに芙実は表情を歪めそうになるのを堪えた。

「えーっとぉ・・・・・・・」

理志を見上げると、苦笑している。

「ごめん、ちょっと教えてあげてくれる?今、教えてあげられる奴いなくて」
「はあ・・・・・・」
「時間きたら帰っていいから」
「・・・・・・わかりました」

さんきゅー!と満面の笑みを見せて自分の席へ帰っていった。

芙実の技術を信頼してくれたのはわかるが、新入社員の教育を派遣社員がしていいのだろうか・・・・・と疑念がないわけではない。

それでも頼まれたのだからやるしかない。自分には拒否権はないのだ。

チラと時計を見る。今日はライブに行く日だ。絶対定時で上がりたい。

芙実はさっさと終わらせようと、キーボードに手を伸ばした。


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