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女ざかりの恋の音色は
第9章 誰にも見せたくない
怒ってみたものの、先ほどの寸止めになった欲望はすぐに消え去らず、身体に残ったままだ。

芙実は自分の席に戻って何食わぬ顔で仕事をしていたが、下半身はずっと疼いたままだった。

(もう!理志さんのばかばか!!)

絶頂を迎えてしまいたくて仕方がない。いっそトイレでしてこようかと思ったが、芙実の真面目さがそれを許さなかった。

自分では普段通りにしているつもりなのに、いろんな人に声をかけられる。

「あれ?なんか、今日の樫野さん雰囲気違うね。メイク・・・・・変えた?」
「樫野さん、何かいいことあった?」
「ねえねえ、今日飲みにいかない?」

(うう・・・・・・やはり何か出しているのか・・・・・・)

芙実はいちいち誤魔化して一日をやり過ごすことになった。





「樫野さん、ごめん!客先でトラブルあって、今から行くことになった。リリース作業、俺の代わりに蒼井に頼んだから時間になったらやってくれる?手順はいつも通りだから。ごめんね」
「あ・・・・・はい・・・・・・・」

保守作業を管理しているリーダーが芙実の席に来て謝った。

メインで担当しているコーディング作業とは別に、保守作業を一つ担当している。
そちらは芙実とそのリーダーとで定期的に更新してリリースしていた。

リーダーはそう言ってすぐにオフィスを出ていってしまった。

(理志さんと、リリース作業・・・・・・・)

理志をこっそり探したが、姿は見えなかった。

二人きりになりませんように、と心の中で唱えた。
次二人になったら会社なのにどうなることかと気が気じゃなかった。



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