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女ざかりの恋の音色は
第9章 誰にも見せたくない
「お疲れ様でーす。お先でーす」

芙実の願いむなしく、みんな次々と帰っていく。リリース作業は夜の9時からだった。

「蒼井さん、リリースですか?うちらこれから飲みに行くんですけど、終わったら来ません?受付の子も来ますよ」

理志は後輩の男子社員に声をかけられている。
ビルの受付の女の子も来ると耳に入って、芙実はドキリとする。

目が大きくて色の白い、お人形さんみたいな女性のことを思い出す。
女性社員が、受付の女の子が理志の帰りを待っていたとか、しょっちゅう差し入れといって何か渡しているのを見るとか話しているのを聞いたからだ。

もし受付で自分と彼女が二人並んでいたら、彼女の方にばかり行列が出来る様が想像できる。自分が男でも彼女の方と話したいと思うだろう。

「んー。終わって行けそうだったら」

了解ッス!と言って男性社員は帰っていった。
これで二人きりになってしまった。

時計を見ると9時前だった。

「じゃ、さっさとやろうか」

理志はリリース専用のパソコンの前に移動して言った。
芙実も急いで移動する。

手順書通りに二人ですすめる。いつもやっていることだが、大事な作業なので、いつも二人がかりでやることになっている。

「・・・・・じゃ、あとは完了するまで待って、で、最後に動作確認だな」
「はい」
「いつもこの待ってる間、リーダーと何してるの?」
「お話することもありますけど、だいたいは仕事してます。お互いに」
「キスしたりは?」
「するわけないでしょう!」
「俺、したいなぁ」

芙実は理志を睨んだ。

「嫌です」
「なんで?」
「なんでって・・・・・・。ここ、会社ですよ。いつ誰が戻ってくるか・・・・・」

最後まで言い終わる前に理志はオフィスのドアの鍵を閉めにいった。

「これで入ってこれない」
「・・・・・・だめです。ここではさすがに・・・・・」

理志は屈んで椅子に座っている芙実の頬を両手で掴んで深くキスした。

「んぅ・・・・・・ッ」

理志はひとしきり芙実の唇を堪能すると、少し考えてから椅子に座り、芙実を膝の上に後ろ向きに座らせた。

「ちょ・・・・・・」
「今日のこと怒ってる?」

そう言って胸をわし・・・・・と掴んで揉みしだく。

「・・・・・・・・・」
「失敗したなー」
「え?」

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