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女ざかりの恋の音色は
第9章 誰にも見せたくない
会社からある程度離れたところで理志は立ち止まって芙実の手をつないだ。

「あの、いいんですか?彼女、怒ってたような・・・・・・」
「怒ってた?そう?別にいいんじゃない」
「でも、受付の子と気まずくなると色々困りませんか?」
「・・・・・・・なにそれ」

理志が芙実を見下ろす。急に機嫌が悪くなったみたいで、声が低くなってドキリとする。

「じゃあさ、俺が今から飲みに参加して、途中であの子に『二人で抜けましょうよ』とか言われて、酔った勢いでビルの隙間とかでキスしたりする展開になってもいいわけ?そういうことになったらどうしよう!とか、心配しないの?」
「・・・・・・・・」

理志は、はーっと大きなため息をついた。

「・・・・・なんか、俺ばっかりやきもち焼いてるな」

芙実は理志が何を言ってるか理解できなかった。理志が女の子と楽しそうに話しているのを見る度に、どれほど嫉妬しているのか胸を開いて見せてやりたいくらいだった。

もちろん、飲みになど行ってほしくない。かっこつけて、重い女だと思われたくなくて心にもないことを言ってしまった。

理志はいつも自分への気持ちを誤魔化さずに伝えてくれているというのに、どうも素直に伝えることができない。

芙実は理志の腕を掴んですぐ近くのビルの隙間に入った。

「ごめんなさい、本当は行ってほしくないです・・・・・・!理志さんが他の女の子と話してるの見てるだけで胸が、こう、ぎゅってなるのに・・・・・・。他の子とキスとか・・・・・いやです。だめです。心配です!」
「芙実・・・・・・・」

芙実は思いきって背伸びをして理志にキスした。

「理志さんが好き・・・・・・。私のことなんかすぐ飽きて、他の女の子のところにいったらどうしようって、いつもビクビクしてる・・・・・・。面倒くさい女でごめんなさい・・・・・」
「面倒くさくないよ・・・・・・。嬉しい」

理志は芙実を両手で抱きしめて深くキスした。
唇を離して見つめあう。
もっと正直に自分の気持ちを伝えていいのだという安心感を感じて芙実は言った。

「早く理志さんのお家に行って、いっぱい・・・・・したいです・・・・・・」
「いっぱいしたい?何を?」

理志はいたずらっぽく笑うと、親指で芙実の下唇をゆっくり撫でた。
芙実の顔がか~と熱くなる。もうすでに前戯が始まってるみたいだ。
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