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我が運命は君の手にあり
第5章 第五章
「お婆様はたしか、施設に入居しているんだよね」
「はい、涼風の森っていう……」
「ん? そこって、正面に噴水のあるわりと新しい施設?」
「はい」
「そこなら知ってるよ。理事長は北沢さんのご主人のお父さんなんだ」

冴子は思わず遼を見つめた。

「そうなんですか?」
「うん、俺も最近知ってね。じつは、父とあそこの理事長は古い付き合いで、オープンした時にはフロアに生け花を展示させてもらったんだよ」
「……ちっとも知りませんでした」

冴子は膝に置いたバッグを見つめた。

「あそこは入居一時金ってやつが必要なんでしょう? それでもなかなか評判が良くて順番待ちが多いって聞いたけど、よかったね無事に入居できて」
「はい、職員の皆さんがとても親切で、安心してお任せできるんです」

ワイパーが雨粒を掃き寄せる。現れては滲む夜の街明かりを、冴子は無言で眺めた。

入居一時金……

動揺した。剛介に勧められるまま、藁をも掴む思いでサインした入居時の契約書は、夢のような新生活に埋もれて忘れられ、見直す事はなかった。


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