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我が運命は君の手にあり
第5章 第五章
「よく降るね」
「……そうですね」
雨音が二人のぎこちなさを埋めていた。
「半年経ったけど、事務局の仕事には慣れた?」
「はい、皆さん丁寧に教えてくださるので、少しずつですが慣れてきました」
「そう、よかった」
冴子は前を向き、遼と目を合わせる事を避けた。祖母の入居に剛介が関わっていると言った方がいいのか悪いのか。果たして言う必要があるのかと、堂々巡りを繰り返していた。余計なひと言が、自分の立場を危うくする。それは避けなければならない。
「最近、父と……、父は事務局に顔を出してるのかな」
北沢が退職し遼が家元となってから、染井剛介が姿を見せる事は滅多になかったが、工房で製作したという花器を運んで来た事が数回あった。
「はい、出来上がった花器を持って来られたことが何度か」
「自慢げに?」
「ふふっ、そうですね。守沢さんが師範さん達に取りに来るよう連絡していました。お見えになった時は事務の皆さんとお食事に行かれまず」
遼が横目で冴子を見た。
「冴子さんも?」
「いえ、私は祖母との約束が重なってしまって、残念ながら一度も」
「……そうですね」
雨音が二人のぎこちなさを埋めていた。
「半年経ったけど、事務局の仕事には慣れた?」
「はい、皆さん丁寧に教えてくださるので、少しずつですが慣れてきました」
「そう、よかった」
冴子は前を向き、遼と目を合わせる事を避けた。祖母の入居に剛介が関わっていると言った方がいいのか悪いのか。果たして言う必要があるのかと、堂々巡りを繰り返していた。余計なひと言が、自分の立場を危うくする。それは避けなければならない。
「最近、父と……、父は事務局に顔を出してるのかな」
北沢が退職し遼が家元となってから、染井剛介が姿を見せる事は滅多になかったが、工房で製作したという花器を運んで来た事が数回あった。
「はい、出来上がった花器を持って来られたことが何度か」
「自慢げに?」
「ふふっ、そうですね。守沢さんが師範さん達に取りに来るよう連絡していました。お見えになった時は事務の皆さんとお食事に行かれまず」
遼が横目で冴子を見た。
「冴子さんも?」
「いえ、私は祖母との約束が重なってしまって、残念ながら一度も」