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我が運命は君の手にあり
第5章 第五章
信子は小さなテーブルで折り紙を折っていた。同じ形のものをいくつも作り、組み合わせてくす玉にするのだという。
「もう七個目なの? これ凄く上手に出来てる。色合いもきれいだね」
「うふふ、手先を動かすとボケないらしいのよ。さえちゃんもどう? やってみる?」
「やるやる、教えて」
「じゃあピンク色で折ってもらおうかしら。まずは半分に折ってね」
以前は無気力だった祖母が、今は周囲の働きかけで前向きになっている。肌艶もよく身なりも清潔で、職員の対応の良さが感じられる。
去年までの冴子は仕事を掛け持ちし、くたくたになって帰宅していた。信子を風呂に入れ、寝かせてから明日の食事を作り置きし、汚れ物を洗って干した。地域の支援センターなどに相談する事など頭になく、祖母への義務感だけが冴子をつき動かしていた。
病院の送り迎えや入院等で度々休んでいた職場では肩身が狭かった。理由はどうあれ、人手不足の中休みを取り、誰かに負担が掛かれば嫌みを言われて当然だった。冴子はギリギリの生活を維持する為に、自分の時間など一切持たずに働いた。
そんな彼女は今、余裕を持って信子の笑顔を見守る事ができる。
「ねぇさえちゃん」
「なあに?」
「さえちゃん最近きれいになったわね」
信子が目を細めた。
「そうかな」
「好きな人ができたの?」
「もう七個目なの? これ凄く上手に出来てる。色合いもきれいだね」
「うふふ、手先を動かすとボケないらしいのよ。さえちゃんもどう? やってみる?」
「やるやる、教えて」
「じゃあピンク色で折ってもらおうかしら。まずは半分に折ってね」
以前は無気力だった祖母が、今は周囲の働きかけで前向きになっている。肌艶もよく身なりも清潔で、職員の対応の良さが感じられる。
去年までの冴子は仕事を掛け持ちし、くたくたになって帰宅していた。信子を風呂に入れ、寝かせてから明日の食事を作り置きし、汚れ物を洗って干した。地域の支援センターなどに相談する事など頭になく、祖母への義務感だけが冴子をつき動かしていた。
病院の送り迎えや入院等で度々休んでいた職場では肩身が狭かった。理由はどうあれ、人手不足の中休みを取り、誰かに負担が掛かれば嫌みを言われて当然だった。冴子はギリギリの生活を維持する為に、自分の時間など一切持たずに働いた。
そんな彼女は今、余裕を持って信子の笑顔を見守る事ができる。
「ねぇさえちゃん」
「なあに?」
「さえちゃん最近きれいになったわね」
信子が目を細めた。
「そうかな」
「好きな人ができたの?」