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我が運命は君の手にあり
第5章 第五章
誰もが羨む屋敷に住み、高級車で有名店に乗り付ける男。あちこちに顔が利き、ゴルフやパーティーに誘われる社交性を持ちあわせつつ、ここでは黙々と土を捏ねる。
優雅で不安のない生活とは、こういうものなのだろう。何でも容易く手に入り、気まぐれさえも許される。
気まぐれ……
「土に触れていると心が無になる。邪念を抱いていてもいつの間にか浄化されていく。そうでないと良いものは出来ないからね」
「邪念」
「うむ、君にもあるかね」
冴子は両手で包んだマグカップの飲み口を見つめた。
「あります」
「ふふ……、それじゃあ邪念を持つもの同士、隣の掘っ建て小屋に行こうか」
照明を落とし、工房に鍵を掛けた染井は、隣の小屋の扉を開けた。薄暗いオレンジ色の明かりが二畳程の土間を照らした。そこに足を踏み入れると、高床の板間に小さな囲炉裏が見え、その向こうに襖が見えた。
「あがりなさい、なにも置いてないんだが水と酒はある」
パンプスを脱いで板間に上がると、ひんやりとした感触が心地いい。小屋というよりは田舎風の隠れ家といった趣きがある。
優雅で不安のない生活とは、こういうものなのだろう。何でも容易く手に入り、気まぐれさえも許される。
気まぐれ……
「土に触れていると心が無になる。邪念を抱いていてもいつの間にか浄化されていく。そうでないと良いものは出来ないからね」
「邪念」
「うむ、君にもあるかね」
冴子は両手で包んだマグカップの飲み口を見つめた。
「あります」
「ふふ……、それじゃあ邪念を持つもの同士、隣の掘っ建て小屋に行こうか」
照明を落とし、工房に鍵を掛けた染井は、隣の小屋の扉を開けた。薄暗いオレンジ色の明かりが二畳程の土間を照らした。そこに足を踏み入れると、高床の板間に小さな囲炉裏が見え、その向こうに襖が見えた。
「あがりなさい、なにも置いてないんだが水と酒はある」
パンプスを脱いで板間に上がると、ひんやりとした感触が心地いい。小屋というよりは田舎風の隠れ家といった趣きがある。