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我が運命は君の手にあり
第5章 第五章
暖簾の向こうに姿を隠していた染井が、盆に白ワインの入ったグラスをのせて現れた。

「さあ、そこに座って」

雪見障子の部屋に茶を運んできた彼を思い出した。同時に椿の花も。
火のない囲炉裏を見つめ、座布団に腰を下ろすと、彼がグラスを渡そうとする。

「あの、もうお酒は……」
「これはすっきりと飲みやすいんだ、試しに飲んでごらん?」
「では、少しだけ」

彼の言う通り、喉にすっと落ちていく時の風味と僅かな甘みが、自然とグラスを傾けさせる。染井は軽く頷いて冴子を眺め、子猫でも見ているように目を細めた。
酔いのせいなのか、彼の気まぐれを訊きたくなった。

「ここへは他の方達もよくいらっしゃるんですか?」
「昔は家族で来たもんだが。成長するとこんな場所は面白くもなんともないらしい」

囲炉裏の向こうで胡座をかき、上着を脱いでネクタイを緩める。膝に片肘をのせ、指先で顎を支えた彼は上目遣いで冴子をじっと見た。

「他は君だけだよ」

疑う事は許されない。

「あ、あの、私、車で随分寝た気がするんですけど、ここまではどれぐらい……」

帰る時間が気になった。

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