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我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
それでも彼は、真正面に置かれた自分の作品が素通りされた事に、どうにも納得がいかなかった。

「あ、お家元、お疲れ様です」
「うむ、ごくろうさん」

背後で父剛介の声がする。

「遼、なかなかの出来じゃないか」
「……どうも」

家元である父の評価に背を向けたまま、彼は先刻のスタッフが用意したコーヒーに手を伸ばした。

「おや、彼女は私の作品が気に入ったのかな」
「あぁ、あの方昨日もいらしてました。四時過ぎから終了間近まで、ずっとあそこに立ってるんです。ちょっと変わった人だなと思っ……」

説明するスタッフに黒いコートとハットを手渡し、家元が女に歩み寄る。遼は忌々しく思いながらも、それを止める理由はなかった。

「その花のどこに惹かれるのかね」

会場に流れる琴の音を押しのけ、男の低い声が女に届いた。それでも女は花を見続け、ようやくひとり言のように呟いた。

「……いつ落ちるのかと」


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