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我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
「落ちる? 花がかね。……うむ、残念だが、これは昨日生けたばかりで落ちるにはまだ早い」
丸みのある信楽焼の花器。そこから右に流れた二本の枝に濃い緑の葉が繁り、真っ赤なやぶ椿の花が二輪、少し離れて咲いている。
「君は待っているのか、この花が落ちるのを」
女がようやく剛介を見つめた。色白の肌に艶はなく、化粧っけのない顔に覇気のない目の色。その表情を変えないまま、かさついた厚い唇が重そうに動いた。
「いえ、あの、失礼しま……」
「たとえ地に落ちても、椿はそこで我々の目を楽しませてくれる。水に浮かべてやると一層美しく輝くんだ、上を向いてね」
「……」
女はまた花を見つめた。ゴムで縛った黒髪のうなじが目立って白い。剛介が女に歩み寄り、その肩先で囁いた。
「落ちる花は君か……」
「し、失礼します」
女が急ぎ足で出口に向かった。そこに男児が二人、奇声を上げながら駆け込んできた。咄嗟に身をひるがえした女の肘が、作品のひとつに強く当たった。
「あっ……」
丸みのある信楽焼の花器。そこから右に流れた二本の枝に濃い緑の葉が繁り、真っ赤なやぶ椿の花が二輪、少し離れて咲いている。
「君は待っているのか、この花が落ちるのを」
女がようやく剛介を見つめた。色白の肌に艶はなく、化粧っけのない顔に覇気のない目の色。その表情を変えないまま、かさついた厚い唇が重そうに動いた。
「いえ、あの、失礼しま……」
「たとえ地に落ちても、椿はそこで我々の目を楽しませてくれる。水に浮かべてやると一層美しく輝くんだ、上を向いてね」
「……」
女はまた花を見つめた。ゴムで縛った黒髪のうなじが目立って白い。剛介が女に歩み寄り、その肩先で囁いた。
「落ちる花は君か……」
「し、失礼します」
女が急ぎ足で出口に向かった。そこに男児が二人、奇声を上げながら駆け込んできた。咄嗟に身をひるがえした女の肘が、作品のひとつに強く当たった。
「あっ……」