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我が運命は君の手にあり
第6章 第六章
どうにも暗く湿っぽい女でしかなかった秋津冴子が、今は憂いを帯びた女性となって遼の心に住み着いている。あの日花展の受付に姿を現してから、彼女は瞬く間に遼の目を釘付けにし、心を奪ってしまった。

彼女のどこが気になるのかと見つめるうちに魅了され、けれども、無為に立ち入ってはいけないと思わせる何かが興味を掻き立てた。
きっと初対面の印象が悪すぎて、そのギャップが彼女の魅力を助長して見せたのだろう。それはわかっていた。だが、日に日に思いはつのり、ため息が増えた。いつしか冴子は彼の理想の女になり、立ち居振舞い全てに魅せられいった。

和服にも惹かれたが。服を着た彼女は、露出の少ない服装であるにも関わらず、見事な曲線美で彼を戸惑わせた。
脱げばヴィーナスの彫刻よりも肉感的だろうと、雄の本能が顔を出す。その下劣さに気づき目を逸らせば逸らす程、意識はそこに注がれていった。

冴子が来てからの毎日は充実し、自然、家元としての使命感も高まっていった。
自宅に師範一同を呼び集め、今後の方針について広く意見を求めるようになった。その後は玄関近くに設えている教室で花を活け、其々を評価し合って士気を高めた。
敷居の高かった屋敷は月に一度の交流の場となり、時江の協力も得て個々の結び付きを強めていった。

「お家元、やる気満々ですね。我々も負けませんよ」

新しい家元に心許なさや不満を感じていた彼らも、遼の試みに期待を抱くようになっていた。

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