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我が運命は君の手にあり
第6章 第六章
「ここを気に入ってくれたならまた来よう。気軽に食事出来るし」
「ありがとうございます」
「そうだ、次はタクシーにしよう、俺もビールを飲みたいからね、ははっ」
「すみません。私だけ」

遼はまた、花器を割った時の女と重ね合わせた。こうも印象が変わるものなのか……

「い、今のは冗談だよ。俺は秋津さんを見てるだけで……あ、いやその、秋津さんが楽しんでくれてるならそれで」

見え透いた言葉ばかりが口を衝き、年端のいかないガキのように落ち着かない。
彼女はそっと目をふせ、白い手の甲で淡く染まった頬に触れた。その横顔の艶かしさは、他の男に見せてはいけないものだった。

「お酒弱いんですか?」
「好きですけどあまり強くないんです。すぐに赤くなってしまって」

かわいいですね、と言おうとして口を閉じた。年上の女性に使って良い言葉なのかどうか、考えて黙り込む。

「ちゃんと自宅まで送るから気にしないで」

これもどうなのか。変に勘繰られても困る。

「ありがとうございます」

二人は時折見つめ合い、仕事の事や、様々な花の名前などを語り合った。三万種はあるといわれる蘭の話をすると、冴子は眼を丸くして遼を見つめ、彼は潤んだ瞳に魅せられていった。


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