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我が運命は君の手にあり
第6章 第六章
「も、もちろん本気がいいけど無理は言えないし、時々食事に出掛けるとかドライブしてるうちにその、……難しくないです。好きになるのは難しくないですから」

しどろもどろの告白を、冴子は真顔で聞いていた。遼は己の早まった行動を後悔していたが、冴子の眼差しに一縷の望みを抱いて待った。

「あの……私は、今が幸せなんです。これ以上の幸せはないと思っています。食事に誘って頂くのはありがたい事ですけど、ちゃんとしたお付き合いは出来ません。お家元、いえ、遼さんだからではなく誰とも」
「え、なんで? この先ずっと一人でいるつもりなの?」

あの北沢だって良縁に飛び付いて結婚を決めたじゃないか。結婚相手としての俺は、贅沢三昧は無理でも、決して不自由な思いをさせない自信がある。俺の回りの女達の目は、いわゆる玉の輿を狙って……

「裏切りますから、人は」

耳を疑った。
それは俺に対して言っているのか。誰かに裏切られた経験がそう言わせているのか。
彼は、冴子に感じていた隔たりが何なのか、やっと理解出来たと思った。

「俺は、俺は裏切らない」
「……そうかもしれません」
「絶対裏切らない」

沈黙の後、冴子がドアを開いた。

「秋津さん、俺また誘います。いいですよね」
「……今日はありがとうございました。おやすみなさい」

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