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我が運命は君の手にあり
第6章 第六章
「彼女を知らないから言えるんだよ、彼女は人を貶めたり裏切ったり出来る人じゃない。それに……遊びじゃないんだ」

むきになる遼に比べ、時江は冷静だった。

「一概には言えませんがその方自身、人を信頼出来ないのでは? 悲しい事ですが、ゆくゆくは僅かな疑念から亀裂を生みますよ」

相手が冴子だとわかれば時江は何と言うだろう。反対するだろうか、一抹の不安が過る。

「お家元は染井流の未来を担っていくお立場です。師範の皆様、お教室の生徒様、スタッフの皆様、全ての要はお家元です。信頼がなければ成り立ちません」
「わかってるさ、大袈裟だな」
「ご自分と関わっている皆様の将来を軽々と決めてしまう事は良くありません」

時江のいつもの口調であり、いちいちもっともな意見だった。だが、遼は珍しく反発した。

「俺は、俺の将来は自分で決めるし染井流も発展させる。それでいいんだろう? 誰にも文句は言わせない、もちろん親父にも」

時江は平然と遼を見ていた。彼の覚悟は全く響いていないようだった。

「……その方が賢明な方でしたら、きっとお断りになると思います」

一瞬たじろいだ。

「すべてこれからだよ、俺自信あるんだ」

時江は怒りも落胆も示さず、家政婦の顔でテーブルの隅を拭いている。

冴子に会いたかった。恋に尻込みしている彼女の心を変えたい。それが出来るのは俺だけだ。信頼は時間をかけて築いていくものだ。俺にはそれが出来る。
彼は飲み干したビールの缶を握り潰し、おやすみと言って席を立った。










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