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我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
ハットを被って出ていく父の背中を一瞥し、遼は秋津冴子の前に立った。
「連絡なんかしなくていいですよ。からかっただけなんです。あの人はいつもそうなんだ、だから気にしないでください」
「いいえ」
彼女はすがるように遼を見上げ、すぐに力なく目を伏せると再び頭を下げた。
「本当に申し訳ありませんでした」
「あの、何かあったらここに」
遼は咄嗟に自分の名刺を手渡した。
何かあったら……
(何があるというんだ)
会場をあとにする秋津冴子をスタッフ全員が見つめている。その目に浮かんでいるのは同情ではなく、好奇の色だった。
「ねえ、まさかね」
「まさかでしょ」
囁く声が伝わってくる。誰もが同じことを思っているに違いない。遼の胸に冷たい靄がかかった。
「さあさあみんな、早く片付けて焼肉!」
「はーい」
受付スタッフの声で、止まっていた空気が動きだした。
「連絡なんかしなくていいですよ。からかっただけなんです。あの人はいつもそうなんだ、だから気にしないでください」
「いいえ」
彼女はすがるように遼を見上げ、すぐに力なく目を伏せると再び頭を下げた。
「本当に申し訳ありませんでした」
「あの、何かあったらここに」
遼は咄嗟に自分の名刺を手渡した。
何かあったら……
(何があるというんだ)
会場をあとにする秋津冴子をスタッフ全員が見つめている。その目に浮かんでいるのは同情ではなく、好奇の色だった。
「ねえ、まさかね」
「まさかでしょ」
囁く声が伝わってくる。誰もが同じことを思っているに違いない。遼の胸に冷たい靄がかかった。
「さあさあみんな、早く片付けて焼肉!」
「はーい」
受付スタッフの声で、止まっていた空気が動きだした。