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我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
染井剛介は奔放な男だった。還暦間近になって渋味を増し、端整な顔立ちには凄味が加わっていた。誰に対しても紳士的に振る舞ってはいたが、常に女の陰が付きまとい、数え切れない程の浮き名を流していた。だが、余程抜かりがないのか、金にものを言わせているのか、野暮な問題が起きたことは一度もなかった。

周囲は遼の手前、素知らぬ顔でいてはくれたが、漏れ聞こえてくる好色な父の噂は恥でしかなく、そんな男が親であることは勿論、家元であることも許せなかった。
彼にとっての救いは、父と関係した女の顔も名前も、誰一人知らない事だった。蔑む相手は剛介一人で充分だった。

(まさか……)

素性の知れないあの女に興味を抱いたというのか。二人は何を話していたんだ。なぜ彼女はあいつの作品だけを……

「こんにちは、花展のご成功おめでとうございます」

レモンイエローのコートを纏い、ちょこんと頭を下げたあとの明るい笑顔。彼女はその場の空気をがらりと変えた。

「やあ、咲ちゃん、わざわざ来てくれたんだ」

自然に笑顔が浮かび、遼の気持ちが和らいだ。


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