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我が運命は君の手にあり
第7章 第七章
本城を乗せたタクシーを見送る間、彼は何も考えなかった。テールランプが遠退くのを無感動に見つめ、携帯の着信に気づいてようやく我に返った。

――面会が終わりました

冴子からのメールに、すぐ行きますと返信し、小走りで駐車場に向かった。

いったいどういう事だ。咲はただの幼馴染みで妹みたいなものだ。彼女はひとりっ子だったから、姉と俺によく懐いてくれた。ただそれだけだ。咲だって同じ筈だ。今更特別な感情なんて……

「どうか咲さんを大事になさってください」

時江さんも師範も気を回した過ぎだ。おじさんだって、親父との付き合いも長いし、近所のよしみで染井流を指名してくれたんだ。だいたい俺が誰を好きになろうと自由じゃないか。ただし咲は違う。確かに親しみはある、だが特別な感情は一切ない。

遼は腹を立てていた。自分の人生を何者かに邪魔されそうで苛立った。アクセルを踏み込み、遅い車に悪態をつきながら先を急いだ。

ロータリーの噴水が暗がりで色を変えている。その向こうの車止めに和服の女性を認めた時、気分は瞬く間に晴れ渡った、
冴子が軽く会釈するのが見える。

ーー俺は彼女を愛している

彼は自覚した。これまで誰にも抱いた事のない純な想いが、心の真ん中にしっかりと芽吹いている事を。外野の忠告など、そよ吹く風でしかなかった。






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