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我が運命は君の手にあり
第8章 第八章
「まあ、ふふっ。成人式の時は、それはそれは豪華な着物をお披露目に来て、着物なんて苦しくてやだ、ってさんざん言ってたのよ。でもそうね、ゆくゆくは着る機会も増えるだろうから良い事だわ。咲さんて幾つになったのかしら、たしか二十……三、違うな、二十四だ。あれから四年かぁ……、私も年をとる筈よねぇ」

独りごちた彼女は冴子の肩を軽く叩き、鼻歌を歌いながら席に戻った。
内心穏やかでいられない冴子は、手洗いに行く振りで鏡の前に立った。
分不相応な幸せを手にしておきながら、何が面白くないのか。あんな小娘に苛立つなんて。

(どうしてそんなに卑しいの?)

咲こそが遼に相応しい女性だ。皆がそれを望み祝福するだろう。私は染井流の未来をぶち壊しにしてしまう。
日々の暮らしに追われていた自分はもういない、もう充分な筈だ。なのにあれもこれもと手を伸ばし、手に入れたその中でもがいている。苦しい。
誰かに懺悔したかった。だが、非難され、軽蔑され、全てを失うのは目に見えていた。

蛇口から出る水が冷たい。去年の秋は花さえも恨んだ冴子だった。

(戻りたくない……)

鏡を見据えて肩の力を抜き、席に戻ってコーヒーを啜った。








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