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我が運命は君の手にあり
第8章 第八章
彼が出て行った後、冴子はビデを使用して奥まで念入りに洗浄した。濡れてしまったショーツを仕方なく穿き、レジでのど飴を買って外に出た。

「俺の事嫌いになった?」

神妙な顔でハンドルをきる遼に「いいえ、ちっとも」と俯く。彼の欲情を掻き立てる対象が咲ではなく、自分である事に溜飲が下がる。

「そろそろ着くよ」

瓦屋根と竹垣が見えてきた。懐かしさと共に、初めてここへ来た日の事が蘇る。不安と緊張で押し潰されそうだった自分はどこへ行ってしまったのか。

「あれ? なんで親父がいるんだよ。出掛けた筈なのに」

駐車場に染井の車が止まっている。その隣に駐車する遼の横で冴子の心臓は早鐘を打ち、手の先が冷たくなっていった。

「さあ着いたよ」

数寄屋門は今日も威厳に満ちている。冴子は門を見上げて立ち止まり、鼓動を静めようと深く息を吸った。

「どうかした?」
「あ……いえ、この香り」

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