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我が運命は君の手にあり
第8章 第八章
「あぁ、金木犀だよ。遠くまで香るらしくて、この匂いで秋の訪れを感じるっていうご近所さんが多いんだ」

季節を告げる香り。その甘い匂いを胸一杯に吸い込み、冴子は「落ち着け、何も起こらない」と、自分を励ました。

遼に続いて石畳を歩き、玄関に入った。

「ただいま、時江さん、秋津さんを連れてきたよ」
「こんにちは、秋津です」

奥から時江がすたすたと歩いてきた。

「お家元、おかえりなさいませ。秋津さん、お待ちしてました」
「ご無沙汰しております」

一礼して顔を上げると、時江の眉が僅かに動いた。

「どうぞ中に」
「冴子さん、ほら、上がって」

遼に続いて冴子が靴を脱いだ。懐かしさに立ち止まって辺りを見渡すと、階段から足音がする。

「やぁ、久しぶりだね。私に会いに来てくれたのかな」

スーツを着た染井剛介が不敵な笑みで近付いて来た。


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