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我が運命は君の手にあり
第8章 第八章
雪見障子を開けた遼が、「おいで」と手招きをする。いつも障子越しに見ていた景色はほんの一部だった。澄んだ秋空に聳え立つ木々、四季を彩るであろう草花の群れ、芝生にならんだ踏み石。
「広いお庭ですね。あ、この香り……」
「あれが金木犀の木だよ。10メートル位あるかな、うちのは大きいらしいんだ。俺が生まれる前からあってね」
垣根をはるかに越える大木。冴子がここへ通っていた頃、外から見上げていた木だ。
「見えるかな、小さい花がたくさん咲いてる。一週間で散ってしまうけどね」
冴子は花の咲いている枝先から根元へと視線を下げた。
「まぁ、オレンジ色の絨毯みたい」
地面に丸く散った細かな花を指差した。
「子供の頃、あの木の下で姉と咲ちゃんと3人で花を集めて遊んだよ」
「かくれんぼや鬼ごっこも出来そうですね」
「ははっ、芝生で寝転んだりね」
懐かしむ彼の顔には、子供時代に育まれた明るさがある。子供達のはしゃぎ回る様子、それを見守る大人達の優しい眼差しが容易に想像出来た。
生い立ちの違いをそこに見た冴子は、ポケットに忍ばせた口紅をきゅっと握った。
「広いお庭ですね。あ、この香り……」
「あれが金木犀の木だよ。10メートル位あるかな、うちのは大きいらしいんだ。俺が生まれる前からあってね」
垣根をはるかに越える大木。冴子がここへ通っていた頃、外から見上げていた木だ。
「見えるかな、小さい花がたくさん咲いてる。一週間で散ってしまうけどね」
冴子は花の咲いている枝先から根元へと視線を下げた。
「まぁ、オレンジ色の絨毯みたい」
地面に丸く散った細かな花を指差した。
「子供の頃、あの木の下で姉と咲ちゃんと3人で花を集めて遊んだよ」
「かくれんぼや鬼ごっこも出来そうですね」
「ははっ、芝生で寝転んだりね」
懐かしむ彼の顔には、子供時代に育まれた明るさがある。子供達のはしゃぎ回る様子、それを見守る大人達の優しい眼差しが容易に想像出来た。
生い立ちの違いをそこに見た冴子は、ポケットに忍ばせた口紅をきゅっと握った。