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我が運命は君の手にあり
第8章 第八章
「お茶が入りましたよ」
座卓に湯呑みと菓子が並ぶのを見た遼は、慌てて時間を確認した。
「俺もう行かなきゃ。冴子さん、慌ただしくてごめんね」
急ぎ足の遼に「いえ、こちらこそありがとうございました」と冴子が礼を言った。
「時江さん、見送りはいいからあとはよろしく」
「いってらっしゃいませ、お気をつけて」
遼は軽く手を上げ、襖の向こうに姿を消した。
縁側の障子を閉じた冴子は勧められた座布団に座り、時江と向かい合った。二人では広すぎる部屋に沈黙が流れたが、冴子はそれもまた懐かしく受け入れた。
「時江さん、お電話でしかお礼を言えなくて申し訳ありません、直接のお礼が遅くなってしまって。素敵なお着物一式、本当にありがとうございました」
「お気遣いなく。電話のお礼で充分ですよ」
時江はなに一つ変わらず、これまでも、これからも同じだと思わせてくれる。
「ひと目見て気に入りました」
「奥様が懇意にしていた呉服屋さんに久しぶりに顔を出したら、入ったばかりだという品を店の奥から出してきてくれまして……。私に似合いそうにないけれど、あなたならと思って、決めました」
「まぁ、そうだったんですか」
座卓に湯呑みと菓子が並ぶのを見た遼は、慌てて時間を確認した。
「俺もう行かなきゃ。冴子さん、慌ただしくてごめんね」
急ぎ足の遼に「いえ、こちらこそありがとうございました」と冴子が礼を言った。
「時江さん、見送りはいいからあとはよろしく」
「いってらっしゃいませ、お気をつけて」
遼は軽く手を上げ、襖の向こうに姿を消した。
縁側の障子を閉じた冴子は勧められた座布団に座り、時江と向かい合った。二人では広すぎる部屋に沈黙が流れたが、冴子はそれもまた懐かしく受け入れた。
「時江さん、お電話でしかお礼を言えなくて申し訳ありません、直接のお礼が遅くなってしまって。素敵なお着物一式、本当にありがとうございました」
「お気遣いなく。電話のお礼で充分ですよ」
時江はなに一つ変わらず、これまでも、これからも同じだと思わせてくれる。
「ひと目見て気に入りました」
「奥様が懇意にしていた呉服屋さんに久しぶりに顔を出したら、入ったばかりだという品を店の奥から出してきてくれまして……。私に似合いそうにないけれど、あなたならと思って、決めました」
「まぁ、そうだったんですか」