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我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
携帯電話で時間を確認し、十四時ちょうどにインターホンのボタンを押した。

「はい」
「あの、秋津冴子と申します」
「少々お待ちください」

抑揚のない女の声に緊張が高まった。玄関から続く石畳を、和服に前掛けをした女性が歩いてくる。格子越しに見えるその人はあの男の妻なのか。

「いらっしゃいませ。旦那様がお待ちです」

丁寧な対応に気後れし、ますます身の細る思いがする。謝罪の言葉を述べようにも、先をゆく女の足取りがそれを良しとはしてくれない。

「あの、奥様ですか?」

遠慮がちに訊ねた冴子を振り返り、女はこれまで何度も口にしたであろう台詞を淀みなく語る。

「奥様はだいぶ前にお亡くなりになりました。私は住み込みの家政婦としてお手伝いさせて頂いております」

無言で頷いた冴子は案内されるまま、広い玄関の片隅でスニーカーを揃えた。

「どうぞこちらへ」


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