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我が運命は君の手にあり
第9章 第九章
「ふはははっ、懐かしいな咲。咲は昔からそうやって遼君の手を焼かせてたからなぁ」
「社長、これは先が楽しみですね」
「ん? 益田さん、今、咲と先を掛けたのかね、ははは……」

咲も一緒になって笑いだし、誰も遼の気持ちには踏み込まなかった。彼は一旦は肩が軽くなったものの蟠(わだかま)りが残った。
心に決めた人がいる、と告げる機会を逃してしまった。咲の気持ちには応えられない、妹としてしか見ていないと伝えなければ……

――どうするんですか?

さっきの益田の目はそう問いかけてきた。けれどその益田は今、綾辺と愉快に笑っている。俺の事を笑っているのか。
はっきりさせておかなければ、このままではまずい……

遼は皆と談笑しつつ葛藤した。言ってどうなる、水を差すだけではないか。取り敢えず今は、綾辺の助け船に乗っておこう。結婚の話が出たわけではないんだ。馬鹿正直に真実を告げたとたんにチャンスを逃す。次に繋がる仕事をみすみす手放せるか。染井流の未来は俺の肩に掛かってる。
遼は冷たい烏龍茶を飲み干した。

「お二人の写真を撮らせてください。……自然な感じがいいのでカメラを気にしないでくださいね」

えっ、と見つめ合った二人はフラッシュを浴びた。







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