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我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
座布団を使って良いものかと迷った彼女は再び促され、ようやくそこに腰を下ろした。
染井は床の間を背に座り、涼しげな表情を冴子に向ける。額から後ろに流した髪には白いものが混じってはいたが、太い眉の下の眼光は鋭く生気に満ちていた。渋茶色の絣の着物に羽織を重ねた姿は落ち着き払っていて、それがかえって冴子を緊張させ、怯えさせた。
「あの、これ、つまらないものですがお茶菓子に……」
冴子はたたみ一畳程もある座卓の上に、おずおずと手土産をのせた。
「あぁ、わざわざありがとう。気を使わせてしまってすまないね」
「失礼します」
襖が開き、家政婦がお茶を持ってきた。茶托にのせた湯飲みを「どうぞ」と差し出されたが、冴子には茶を啜る余裕などなかった。
「あぁ、折角だからこの菓子折りを頂こうかな」
「あ、ど、どうぞ」
「ありがとうございます。ではすぐに」
家政婦が菓子折りを持っていなくなると、心細さが増した。用意してきた現金の額が気になり、胃の辺りが重苦しくなった。
染井は床の間を背に座り、涼しげな表情を冴子に向ける。額から後ろに流した髪には白いものが混じってはいたが、太い眉の下の眼光は鋭く生気に満ちていた。渋茶色の絣の着物に羽織を重ねた姿は落ち着き払っていて、それがかえって冴子を緊張させ、怯えさせた。
「あの、これ、つまらないものですがお茶菓子に……」
冴子はたたみ一畳程もある座卓の上に、おずおずと手土産をのせた。
「あぁ、わざわざありがとう。気を使わせてしまってすまないね」
「失礼します」
襖が開き、家政婦がお茶を持ってきた。茶托にのせた湯飲みを「どうぞ」と差し出されたが、冴子には茶を啜る余裕などなかった。
「あぁ、折角だからこの菓子折りを頂こうかな」
「あ、ど、どうぞ」
「ありがとうございます。ではすぐに」
家政婦が菓子折りを持っていなくなると、心細さが増した。用意してきた現金の額が気になり、胃の辺りが重苦しくなった。