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我が運命は君の手にあり
第10章 第十章
冴子を育てる為に働き詰めだった信子は、編み物をする余裕などなかった。不器用ながら、ひと針ひと針編み進む指の動きと真剣な顔つきは、祖母の生き様そのものだと冴子は思った。
夫に先立たれ、女手一つで育てた息子。その彼が家庭を持ち、子にも恵まれて喜んだのも束の間、予期せぬ事故で亡くなる。母にまで去られた孫の為に、無理を重ねて弱くなった祖母の人生を思うと、冴子は自分が生まれて良かったのか、いない方がずっと楽に生きられた筈だと、申し訳ない気持ちになる。
「さえちゃんの花嫁姿はまだかねぇ。早く幸せになって欲しいねぇ」
「おばあちゃん、私はずっと幸せだよ」
「そうかい、うんうん、それなら真吾も喜ぶよ。あぁ、真吾にもマフラーをこさえなくちゃ。さえちゃんとお揃いの黄色でいいかねぇ。あの子は寒がりだから」
「ふふっ、お父さんきっと似合うよ」
カーテンを開けると、暗い闇に白い粒がふわふわと舞っている。
「おばあちゃん、雪が降ってきた」
「あらあら、さえちゃんバスで帰るの?」
「うん、そろそろ行かなくちゃ」
夫に先立たれ、女手一つで育てた息子。その彼が家庭を持ち、子にも恵まれて喜んだのも束の間、予期せぬ事故で亡くなる。母にまで去られた孫の為に、無理を重ねて弱くなった祖母の人生を思うと、冴子は自分が生まれて良かったのか、いない方がずっと楽に生きられた筈だと、申し訳ない気持ちになる。
「さえちゃんの花嫁姿はまだかねぇ。早く幸せになって欲しいねぇ」
「おばあちゃん、私はずっと幸せだよ」
「そうかい、うんうん、それなら真吾も喜ぶよ。あぁ、真吾にもマフラーをこさえなくちゃ。さえちゃんとお揃いの黄色でいいかねぇ。あの子は寒がりだから」
「ふふっ、お父さんきっと似合うよ」
カーテンを開けると、暗い闇に白い粒がふわふわと舞っている。
「おばあちゃん、雪が降ってきた」
「あらあら、さえちゃんバスで帰るの?」
「うん、そろそろ行かなくちゃ」