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我が運命は君の手にあり
第10章 第十章
通りから敷地に入って来る黒い車が見える。冴子はコートを羽織り、バッグを手に取った。
「旦那様にお会いしたらくれぐれもよろしく言ってね。ばあちゃんの恩人だからね」
「はい、わかってます」
「本当にあの方には足を向けて眠れないよ。失礼のないようにね、ばあちゃんの恩人だからね」
「大丈夫、心配しないで。それよりおばあちゃん、風邪ひかないように気をつけてね」
遼からの連絡は二、三日に一度、冴子が床に着く頃のメールに限られるようになっていた。互いに頭を冷やそうと話したのは、新春花展の頃だった。
「俺は変わらない、君がわかってくれるまで待つよ。愛してるんだ」
来場者で賑わう会場の受付けに立ち、遼の視線に胸を熱くしながらも無視を決め込んだ。だが一方で、よく顔を出すようになった咲に激しく嫉妬し、罪のないその笑顔を呪った。咲が遼の背に何気無く触れたり、二人が談笑する姿を見るにつけ、冴子は噴き出す怒りといら立ちに歯を食い縛らなければならなかった。
「旦那様にお会いしたらくれぐれもよろしく言ってね。ばあちゃんの恩人だからね」
「はい、わかってます」
「本当にあの方には足を向けて眠れないよ。失礼のないようにね、ばあちゃんの恩人だからね」
「大丈夫、心配しないで。それよりおばあちゃん、風邪ひかないように気をつけてね」
遼からの連絡は二、三日に一度、冴子が床に着く頃のメールに限られるようになっていた。互いに頭を冷やそうと話したのは、新春花展の頃だった。
「俺は変わらない、君がわかってくれるまで待つよ。愛してるんだ」
来場者で賑わう会場の受付けに立ち、遼の視線に胸を熱くしながらも無視を決め込んだ。だが一方で、よく顔を出すようになった咲に激しく嫉妬し、罪のないその笑顔を呪った。咲が遼の背に何気無く触れたり、二人が談笑する姿を見るにつけ、冴子は噴き出す怒りといら立ちに歯を食い縛らなければならなかった。