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我が運命は君の手にあり
第10章 第十章
共に歩む事など出来ないのだからこれでいい。そう理解していながらも、心は疲弊していく。
冴子は染井にすがり、自ら望んで肉欲に溺れた。こんなふしだらな女に遼を愛する資格はない。そう自分を貶めながらも、胸の奥底には、咲への嫉妬と、遼への当て付けが存在した。

胸に巣食っている悪心を振り払う為のひととき。それを見抜いているかのように、染井は意のままに冴子を弄んだ。



「底冷えすると思ったら、やはり降ってきたね」

冴子はミラー越しの視線に「えぇ」と答え、信子からの感謝の言葉を伝えた。

「困っている事があるなら何でも言いなさい、力になる」

「いえ、もう充分過ぎる程お世話になっていますので、これ以上は何も」

こんな会話がいつまで続くのだろう。
退職も考えた。それが遼にとっても、自分にとっても最良の選択だ。それでも、人生を変えてくれた染井に背を向ける事は祖母を落胆させる。施設を出ると言いかねない。そして冴子自身、元の暮らしに戻るのは絶対に嫌だった。

「工房に向かうよ、明日は休みだろう、泊まっていくといい」

「……はい」


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