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我が運命は君の手にあり
第10章 第十章
小窓障子の隙間から朝日が差し込んでいる。眩しさで目覚めた冴子は、起きて寝巻きの胸元を整えた。ふいに襖が開き、暖かな空気と共に染井が入ってきた。

「お目覚めかな?」

昨夜の自分を思い出し、冴子ははっと目を伏せた。

「おはようございます」

「おはよう」

「冴子、見てごらん」

障子が開けられ、眩い光が凌辱の部屋を照らした。淫らな愛欲の痕跡が清められていく。
気だるさを押して立ち上がった冴子の目に、見事な雪景色が飛び込んできた。

「まぁ……」

闇から抜け出た空は青く澄み、視界の向こうには鬱蒼とした竹藪が見える。

「夜中に少し積もったんだ。今日は良い天気だから午後には解けるだろう」

垣根のように並んでいる木々が目を引いた。

「旦那さま、あの木」

「……うむ、やぶ椿だ。寒さにはあまり強くないんだが」

濃い緑の葉と枝がふわりと雪を留めている。そこで凛々しく咲く赤い花がいじらしい。白い地面に落ちた花が、次に落ちる花を見上げている。

「きれい……」

「雪椿だ。ここではなかなか見られない景色だよ」

――たとえ地に落ちても、椿はそこで我々の目を楽しませてくれる

いつか染井が語っていた言葉にようやく血が通った。


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