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我が運命は君の手にあり
第10章 第十章
遼を遠く感じる。車に残してきた携帯が気になったが忘れるように努めた。

空腹が満たされてひと息つくと、外の明るさに反して気が滅入ってくる。この場所に太陽は似つかわしくなかった。月もいらなかった。暗闇に隠れているべき自分だった。淫欲の魔物に囚われた自分を端から眺めると、その浅ましさ、いかがわしさに身震いがする。
この頃冴子は、子を捨てて男に走った母と自分を重ねるようになった。

(血は争えない。平気で人を裏切る。そして深く傷つける、ずっと……)





「さて、そろそろ工房に案内するとしよう」

「はい、よろしくお願いします」

工房の扉が開き、寒々とした作業場が冴子を迎えた。

「すぐに暖かくなる」

ヒーターを付けた染井が、冴子を手回しろくろの前に座らせた。

「腕を捲った方がいい、汚れるからね」

「はい」

ろくろの中心に丸めた粘土を置き、湯呑みの底になる土台を形作っていく。冴子は幼い頃の工作を思い出して心が弾んだ。

「焼き上がったら八割ぐらいに縮むから、それを見越して大きさを決めるといい」

「はい」

捏ねて伸ばした粘土を輪にして土台の縁に重ねた。指で撫で付けて繋げ、整ったら、さらに粘土を重ねていった。

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