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我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
「やぶ椿に匂いはないが、この色が鳥を引き寄せる。彼らはこの雄しべに分け入って、大量に分泌された甘い蜜を啄むんだよ。ふふっ、ほら、なんとも艶っぽい花だろう?」

水に浮いた花が逃げないようそっと支えた彼は、黄色い雄しべの中心に、節くれ立った中指をねじ込んだ。

「ところで今日は平日だが、わざわざ仕事を休んでここへ?」

蜜に濡れた指先に黄色い花粉がついている。彼はそれを満足げに眺めると、指先を水に浸してから軽く腕を組んだ。

「は、はい。でもあの、夕方から別の仕事が入っているので……」
「ん? バイトの掛け持ちかね」
「はい」
「君、結婚は?」
「独身です」
「年は」
「三十四です」
「ふつうに就職した方が将来的には楽じゃないのかね」

今すぐここを立ち去りたかった。矢継ぎ早の質問に辟易したわけではなく、彼女はただ、この男の視線の奥に息づいている熱から逃れたかった。

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