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我が運命は君の手にあり
第11章 第十一章
女は返事もせずに、袋入りのナッツを小鉢に移して二人の前に置き、続いてハイボールをめんどくさそうに作って差し出した。

「用があったら呼んで、奥にいるから」

六十半ばと思われる女の痩せた背中がビーズ暖簾の奥に消えた。

「……わかりました」

見送る益田の神妙な声に、遼が思わず笑った。

「益田さん」

「なんでしょうねアレ」

「さあ。まぁいいじゃないですか。目の前にいられるより」

「たしかに」

二人はくすくす笑いなから小さく乾杯した。

「益田さん、じつは俺、咲ちゃんと結婚するつもりはないんです」

驚くほどすんなり言葉に出来た。

「ほぅ、なるほど」

益田はそれだけ言ってハイボールを一口飲んだ。

「もう外堀は埋まってますよ」

「……俺、嘘はつきたくないんです」

「染井流にとっての願ってもない条件がこれだけ揃っているのに、全てふいにするんですか? ……嘘も方便でしょう」

益田は遼に世渡りを教えているようだった。
冴子を知らなければ、相手が誰であれ迷いなく心を決めただろう。だが……

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