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我が運命は君の手にあり
第11章 第十一章
二人は黙ってグラスを傾けた。
冴子が恋しかった。距離を置こうとしている彼女が恋しい。なぜ隣にいてくれないのか。
己の無力さを自覚しても、想いを絶ちきる事など出来ない。すべてを投げ捨ててどこかへ行ってしまえたら――

(そんな事はできない)

「いつか傷は癒えますよ。成功を勝ち取りたいのなら、一時の感情に振り回されないことですね、失うものの大きさがわからないあなたではないでしょう、お家元」

この男は心の底で、俺を青いと笑っているんだろうか。こいつの鼻を明かしてやりたい。
彼はこれまで以上に強く思った。綾辺グループとの事業は必ず成功させる。力と信用を勝ち取り、誰からも文句を言わせない程になってやる。

(冴子、待っててくれ)

「そうだ、ひとつ仕事の話をしてもいいですか?」

「どうぞ」

「先程、花展の取材を許可して頂きましたが、教室や事務局の様子も見ておきたいと思いまして」

「もちろんいいですよ。事務局にはさっきの女の子達がいるんです」

「そうですか、それは楽しみだ」

冴子の事は言わなかった。いつか必ず、堂々と紹介してみせる。遼は勢い込んでグラスを空にした。益田はそれをどう受け止めたのか、目を閉じて二度頷き、またもカウンターの奥を覗いて酒を頼んだ。










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