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我が運命は君の手にあり
第11章 第十一章
「お家元、今の……」

小声だったが瞳の奥は興奮している。四十過ぎの独身男には、際立つ美人よりも、冴子のような女に魅力を感じるのだろう。遼は、和服姿の彼女を初めて見た時の衝撃を思い出し、益田の様子を重ね合わせた。

「たしか先日の打ち上げで、私に会わせたかったと仰っていましたよね。秋津さんの事ですよね」

彼は勢い込んで身を乗り出した。

「あ、えぇ」

誤解している、と遼は思った。俺は人に女性を紹介するような世話好きではない。ただ、年齢的に見れば、冴子と益田はつり合っていて、益田が誤解するのも無理はなかった。

「失礼します」

冴子がコーヒーとショートケーキを盆にのせて入ってきた。

「どうぞ」

「ありがとうございます。あ、僕は甘いものは苦手なので、コーヒーだけ頂きます」

益田は冴子の仕草一つひとつを目で追った。

「俺もコーヒーだけで」

「はい」

冴子が遼の前にコーヒーを置くと、益田はどうでもいい質問を投げ掛けた。

「あの、皆さんケーキで良かったのかな」

質問に意味はない。この男は、冴子と話したいだけなのだ。遼は鼻で笑った。


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