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我が運命は君の手にあり
第11章 第十一章
腕時計は七時十三分。遼はアパートの前で車を降りた。階段を上がってチャイムを鳴らすと程なくドアが開いた。

「やあ」

「お疲れ様です」

冴子は昼間と同じ服装だった。

「今日はお婆様の所に行く日ではなかったんだね。返信を見てほっとしたよ」

「はい、明日は会いにいきます。どうぞ、お掛けになってください。すぐにお茶を……」

「あぁ、お構い無く、八時に予定が入ってるからすぐに帰るんだ」

キッチンに立つ冴子を初めて見た。この椅子に座るのも初めてだった。こんな時間を大切にするべきだ。小さな積み重ねが絆を強くしてくれる。

狭いダイニングには二人掛けのテーブル、小さな戸棚に小さな冷蔵庫、電子レンジ。一目で見渡せる冴子の部屋に贅沢品は一切なかった。
寝室に置かれた着物用の箪笥や姿見は祖母のものらしく、着物を着る機会の多い冴子に取っては都合がいい、と遼は思っていた。

もっと良い生活をさせてやりたい。彼はアパートを眺める度に思った。

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