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我が運命は君の手にあり
第12章 第十二性
冴子は否定したが、野田は指先で額の隅を軽く叩いた。

「女の勘ってやつですよ。ところで秋津さんは益田さんをどう思います? 私はお似合いだと思うんですけどねぇ。ちょっとワイルドな感じの男性どうですか?」

「あははっ、確かにワイルド感漂ってる」

頷き合う四人に冴子は苦笑いで答えた。

「悪くはないけど、収入が気になります」

「あはははっ、そこですよねー」

「確かにそれは大事よ」

「ふふっ、みんな現実的なのね」

守沢が二度手を叩いた。

「はいはいそこまでよ、さあ仕事仕事」

「はーい」


昨日、冴子は嘘をついた。――祖母が怪我をしたと施設から連絡がありました。

慌てた素振りで守沢にそう告げ早退を申し出たのは、益田が到着する三十分前だった。
冴子は彼を警戒していた。初対面でのあの驚きよう。無遠慮な視線、名刺を渡された時の意味深な目つき。あれは好意というよりも好奇の目だった。言い様のない気味の悪さ、その危うさに手招きされているようで怖い。ふた月経った今でも不安は拭えず、冴子は再びの対面を切り抜けた事で肩の荷を下ろした。

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