この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
我が運命は君の手にあり
第12章 第十二性
取材を嫌った理由は他にもあった。冴子は退職を考えていた。
遼がアパートに来た日、キッチンの戸棚には、以前染井に貰ったマグカップも置かれていた。遼にそれが分かる筈はなかったが、湯呑みに気付かれて必死に取り繕ううち、戸棚のマグカップまでが気になり冷静でいられなくなっていた。

「秋津さん、業者さんへの振り込みなんだけど、銀行いけそう?」

「はい、準備できてます」

冴子は立ち上がった。

「お願いします、気を付けてね。傘を持っていった方がいいわよ」

「はい、いってきます」

彼女は焦った。僅かな綻びが思わぬ事態を招く。事実を知って苦しむのは遼だ。知られたくない。このままではきっといつか……
今のうち、何ひとつ疑われていないうちに辞めなければならない。だがホテルオープンまでは多忙が続き、同僚に迷惑がかかる。それでも、せめて秋には……
辞めていく人間に取材は必要ない。自分の痕跡などどこにも残したくなかった。
鼠色に染まった梅雨空が、冴子の気持ちをさらに沈ませた。

/334ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ