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我が運命は君の手にあり
第12章 第十二性
自身への言い訳はいくらでも立つ。彼に必要なのは咲だ。彼女といれば遼の未来も染井流の発展も約束される。彼女となら、あとに続く者を産み育てる事が出来る。
冴子は子が望めない事を遼に知られたくなかった。彼の困惑する顔も見なくなかったし、それでもいいと本気で言い出しそうな一途さが嫌だった。彼に値しない、側にいるべきでない自分だった。
この幸運を何ひとつ手離したくない。そんな思いから重ねた罪。このまま隠しおおせると思っていたのだろうか。
携帯が震えた。
――君の茶碗が焼き上がった。良い色がついて形もなかなか良い。明日の夜持っていくよ
――ありがとうございます。いつか全ての工程をひとりでやってみたいです。
――まとめて有給を取りなさい。楽しみだ
冴子は染井から合鍵を渡されていた。行きたい時には電車とバスを乗り継いで工房へ向かう。たとえ短い時間でも、作業場や作品の中に自分を置く事で現実を忘れる事ができた。
冴子は子が望めない事を遼に知られたくなかった。彼の困惑する顔も見なくなかったし、それでもいいと本気で言い出しそうな一途さが嫌だった。彼に値しない、側にいるべきでない自分だった。
この幸運を何ひとつ手離したくない。そんな思いから重ねた罪。このまま隠しおおせると思っていたのだろうか。
携帯が震えた。
――君の茶碗が焼き上がった。良い色がついて形もなかなか良い。明日の夜持っていくよ
――ありがとうございます。いつか全ての工程をひとりでやってみたいです。
――まとめて有給を取りなさい。楽しみだ
冴子は染井から合鍵を渡されていた。行きたい時には電車とバスを乗り継いで工房へ向かう。たとえ短い時間でも、作業場や作品の中に自分を置く事で現実を忘れる事ができた。