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我が運命は君の手にあり
第12章 第十二性
冴子にとっては好都合だった。花展での役目を二人に引き継ぎ、取材に参加してもらえば自分の出る幕はない。益田とも会わずにすむ。その日はここで仕事をしていればいいだけだ。着物を着る機会はもうないのだから、二人に譲ってしまおうか。その一方で、退職理由に頭を悩ませていた。仕事はもちろん、引っ越し先も探さなければならない。冴子は遼への想いを絶つ為、辞め時やそれに伴う雑事だけを考えるよう努めた。



勤務時間が終わり、職場に残った三人は応接室のテーブルとソファを壁際に寄せ、そこにマルチカバーを敷いた。向井が家から持ち込んでくれた姿見の前で、冴子は野田に長襦袢を着せ、涼しげな紗の小紋を纏わせた。

「わぁ、素敵」

帯を巻かれて整っていく野田の姿に糸川が興奮している。

「苦しくない?」

「ぜんぜん大丈夫です。あのう、このポニーテール、今いちですよね」

「ふふっ、そうね」

野田を椅子に座らせた冴子は、その髪をねじって夜会巻きに仕上げた。

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