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我が運命は君の手にあり
第2章 第二章
染井は時江が切り分けてきた羊羮を上機嫌で頬張り、冴子は得体の知れない生き物を見るようにそれを眺めた。

「秋津さん、先ずは二階でお着物を。私がお手伝いさせて頂きますので」
「え、 今ですか?」

冴子は焦って染井をみつめた。

「もちろん今だよ、私への詫びの気持ちがあるのならね」

柔和な表情はかえって不気味で恐ろしかった。今は逆らうよりも従った方が利口なのではないか。だが、このままではこの男の言いなりになり、妙な話に巻き込まれてしまうのでは――。

(だからなに……)

思い通りになった事がこれまで一度でもあったのか。冴子は自分を嘲笑った。どうせ行き詰まっている。いつでも八方塞がりだったじゃないか。

「では秋津さん、こちらに」
「……はい」
「いっておいで」



和服用の桐箪笥が三竿、三面鏡の姿見、化粧台。冴子は窓際に置かれた姿見の前で、変わりつつある自分をぼんやりと眺めた。
足袋、裾よけ、肌襦袢、長襦袢、伊達締め。無駄なく動く時江は時折姿見を見遣り、冴子の背中にまわって小紋を纏わせる。

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