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我が運命は君の手にあり
第12章 第十二性
「糸川さん、お家元にお茶を持っていってくれる? 開場前には毎回そうしてね」

「はい」

北沢が懐かしかった。彼女は今幸せだろうか。この二人もいつか、私を懐かしむ時が来るのだろうか。

師範の本城が現れたとたん、二人の背筋が伸びた。

「本城師範、おはようございます」

「おはようございます。あら、今日は三人? 賑やかね」

「はい、今回私はサポート役なんです」

本城は着物を着ていない冴子にやや首を傾げたが、「五日間、よろしくお願いします」と三人に会釈した。

「よろしくお願いします」

遼の方へ行く本城を見て「秋津さん、師範にお茶持っていきます」と野田が動いた。

「気が利くわね」

「えへっ」

「野田ちゃんがんばって」

「まかせといて」

二人の会話は冴子を和ませた。彼女達は自分で着たいと気付けの練習をするようになり、目に見えて上達している。

(友達、か……)

冴子をさえちゃん、と呼んでくれるのは祖母だけだった。


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